元旦

 新年になった。
 元旦だと気付いたのは、今朝、目を覚ましてからである。しかし 元旦だとてとくにめでたく、ぼくの人生はあと月ふた月で終わるのだ。なので個人的にはおめとうとは言わない。
 夢? ない。
 希望? ない
 目標? ない
 あとわずかで生を終えるという白血病患者の心のうちなどそんなもである。しかしとくに投げやりになっているというわけもないのだ。

 朝、四時。缶コーヒーを逆さまにこぼした。テーブルの上にあったものを横にこぼしたのではない。手に持っていたものをまっ逆さまにこぼして、コーヒーまみれになってしまったのだ。元旦早朝からかなしい気持ちになってしまった。

 朝食、さすがに病院といえども正月くらいはそれらしいものをだしてくるかと頼んでみたが、いつものまずいロールパンにおせちのようなものがちらほらと添えられいるだけだった。おせちにパンというのはどうなのよ。
 昼食、あらかじめだめだとっいってあった麦飯を出してきたので、もうそのまま箸もつけずに下げてもらった。

 ともあれ、そんなこんなではあるが、同室患者がおらず、当然その見舞客も来ないという、しずかきわまりない生活を堪能したのであった。
 今までの人生のなかで、いちばん変わった元旦であった。