寝言のたたかい

「ったくうるせえなあ! 静かにいてくれよ。寝られやしねえよ!」
 午前四時、半覚醒のうちに、自分が隣のベッドのオヤジにむかって発した半無意識のその言葉で目が覚めた。
 それまでも、オヤジ延々と続く無声いびきと寝言で、ぼくは眠りの底からほじくりだされ、半覚醒状態だったのだ。それがついに緒が切れて発した言葉だった。
 相手はいちおういったんはしずになったので、聞こえはしたのだろう。しかしそれも時間の問題で、また元の木阿弥になる。何しろ相手も無意識のことなのだから。

 オヤジはふた晩はナースステーション脇の小部屋へ夜だけ移動させられたのだ。それはいびきなどがひどくて迷惑をかける患者に対して通常とられる措置のようであったが、昨夜はその部屋には先住人が入っていたらしい。

 もう眠れなくなってしまったぼくは、仕方なくミズキにイップクしに行ってきた。そして戻ってみればオヤジは何ごともなかったかのようにスースー寝息を立てているのが癪である。

 オヤジが六人も集まれば、一人や二人はいびきをかく人間がいて当たり前といえばそのとおりなのかもしれないが、当の本人たちにとっては微妙かつ重大な問題なのである。