また外泊ですか?

「来週もまた、外泊行きませんか?」
 主治医がぼくの顔を見てそう言った。
「は? 来週もですか?」
 耳を疑った。体力のほうは赤血球の輸血で何とかなったとしても、ぼくの好中球はずっと百とか二百である。細菌やウィルスに対する抵抗力はほとんどないに等しい。そんな患者を一度ならず、二度も人ごみに出してよいものか。
 主治医は続けた。
「行って欲しいんですよ」
 ううむ、これはいかなることか。生ものすら食べてもよいと言う。
 外泊は先週この世の見納めと思って、がんばって新宿まで行ってきたばかりである。このひとはなぜこんなに危険な外泊を勧めるのだろうか。これはことによると、このあと白血病大魔王にやられてしまうと動けなくなるので、せめて動けるうちにというはからいなのか。
 ぼくはそれとなく聞いてみた。
「それは、動ける今のうちに、ということでしょうか?」
 一瞬の間をおいて、
「はい。そうです」
 と主治医は答えた。
 ぼくのブラスト(芽球)は、もう四十とか五十パーセントである。つまり血球のうちの約半分が出来そこないなのだ。そしてまともな好中球に至っては基準の十分の一程度しかない。それでも主治医が行ってこいと言うものをわざわざ断る理由はない。
「それじゃあ来週も行かせてもらいます」
 ぼくはおずおずとそう答えた。

 なんだかすこし拍子抜けしてしまったが、また新宿に行けるのは嬉しい。
 そんなわけで、今週末もまた行くことになった。
 こんどは何を食べようかなあ。