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山からコゾーがやってきた

 コゾーとは、織田バンドで一緒にやっていた大谷哲範氏のことである。彼はコゾーと呼ばれるほど若いうちからプロとして現場で仕事をしていたのでその名がついた。つまり、業界においてはぼくなどよりずっと先輩にあたるのだが、彼の気さくさに乗じてぼくもコゾーと気軽に呼ばせてもらってきた。

 彼は昨日、たまたま茨城県取手市に私用があって、山形からえっちら車で出て来た。そのついでに病院に寄ってくれたのだ。取手市とここ柏市とは、県は違えども利根川を挟んで隣同士であるから、車で三十分も走れば着いてしまう。彼はぼくに会うためにわざわざ予定を繰り上げて早く出て来てくれたのだ。
 ところがこの日、ぼくには弁護士との面談が入っていた。ちょうど時間がバッティングしていた。ところへもってきてこの弁護士氏、渋滞に巻き込まれたといって一時間も遅刻してきた。ぼくはもうハラハラものであった。コゾーは病院の駐車場で待っていてくれている。しかし次の用事の時間は刻々とせまってきている。

 幸い弁護士との面談が早めに終わったので、なんとかコゾーと会うことができた。彼とももう二十年ぶりくらいになるだろうか。ルックスがまったくあのころと変わっていないのにびっくりした。往々にして音楽関係の人間は年をとってもあまり変わらないひとが多いのだが、彼の変わらなさは尋常ではなかった。ぼくなどはすっかりともぞう爺さんだというのに。
 二十年ぶりのコゾーとなつかしい話を小一時間ほどして、彼はあたふたと病院を後にした。またぜひ会いたいね、と言って。
 彼はルックスもそうだが、その人柄も変わっていなかった。いや、以前よりやさしくなったような気がする。終始ニコニコと笑顔を絶やさないのが印象的だった。
 彼が山形に戻る前に、ぜひもう一度会えるとうれしいのだけれど。