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デブがいないしあわせ

 朝五時前に目が覚めた。
 起床時間は六時なので、もうしばらくしないとみんな起きてこない。
 トイレに行ってうがいをし、ナースステーションの前で体重と血圧を計ってきた。今朝の体重は六十四.九キロ。今は一日二食食べているから、ほとんど増えも減りもしない。朝はパンだけ食べて、あとは夕方何かすこし食べる。昨日はグラタンを食べた。一日に千kcalにも満たないと思うが、僕の場合、こんなもので十分なのだ。

 一方、血圧は近ごろは高めだ。高めというより、ちょっと動くとすぐに上がってしまう。血中の酸素が不足しているのだ。採血の結果はいつも赤血球の数もヘモグロビンヘマトクリットも正常値の半分くらいである。ぼくの白血病の型は、白血球と同時に赤血球も壊してしまう赤白血病と呼ばれる型なのだ。発症の症状も極度の貧血からであった。一時、移植前、寛解に入っているときは、それでも元気に歩けたが、今はふらふらノロノロとしか歩けない。それでもまだ歩けている分だけましなのだろう。主治医は二週間で歩けなくなると言った。それからもう四週間近くが経とうとしている。

 さて、ここ752号室は、人の入れ替わり立ち代わりがはげしく、今はデブが一人もいなくなった。デブがいないとどういうことになるかというと、いびきがなくなるのである。デブはかならずいびきをかく。ジジイが六人も集まればかならず一人や二人はデブが混ざっているものだが、今は幸いにしてひとりもデブがいない。貴重な期間である。ぼくの隣のジジイが時たまいびきをかくが、こちらが「あー」とか「うー」とか声を出すと、ハッと気が付くのか、止まることが多い。それもいつもいつもではないので、まだましである。さらに昼間は透析に行く患者もいるので非常にしずかで落ち着いていてよろしい。
 よっこらは、相変らずよっこらしょどっこいしょとひとり言を言っているが、入口側の端なのでぼくの場所まではあまり聞こえてこないので助かっている。謎のカタカタも聞えてこない。
 今日明日あたり一人退院するようであるが、次に来るのがデブでないことを祈るばかりである。

 夜明けが遅くなったので、窓から見える景色はまだ夜が明けきっていない。今朝は小雨模様でどんよりと曇っている。しかし日中は晴れて暖かくなるらしい。
 十一月ももう下旬にはいった。もうすぐに十二月である。十二月になったらぼくはどうなるのだろう。
 今日も一日よく生きよう。