旧交

 日に日に朝のイップクが寒くなってくる。
 今朝はやけに寒いなあと最低気温を調べたら、六度だそうだ。ジャンパーを羽織っていても寒いわけだ。もうどんどん季節は冬へと向かっている。

 さて、今朝の体温は七度七分。昨夜は高熱が出ることもなく朝までじっくり眠れた。途中数度の小便覚醒を除いて。
 日中一回うんこを洩らした。
 もうずっと水様の下痢が続いているので、おならはトイレに行ってしなければ一緒にうんこが漏れてしまうし、最悪、おならをしたという感覚すらないままにチョロッと漏れたりしてしまうのだ。その度に汚物室へ行ってパンツを洗う情けなさよ。まあそれにもだいぶ慣れてきたけれどもね。パンツだけならまだいいのだが、ズボンにまで染みてしまうと面倒千万なのだ。

 昨日は特にお見舞いの予定もなかったので、午後からうとうとまどろんでいた。ふと目を開けたら、ベッドの前に男が一人立っていた。なにやら金髪でいかついシルエットであった。よく見ると、ぼくがむかしむかしにやっていたバンドのベースのKグチくんであった。
 どえらくびっくりした。来るなどとはひと言も言っていなかったし、だいたい会うのだって数十年ぶりである。彼はすっかり有名人になってしまっていたので、こんなぼくのところへなぞ来るなどとは思いもよらぬことであった。しかし思えば彼はこういうことには昔から非常に義理に篤い男であった。そういうところはひとつも変わっていなかった。
 ともあれ、びっくりしつつ、恐縮しつつも、ロビーのソファへ行って旧交を温めた。ずいぶん話し込んだ。四、五時間は話しただろうか。当時と変わることない彼の笑顔がまぶしかった。ぼくもずい分と懐かしい気持ちになって当時のことを思い出した。まだ二十代で右も左もわからぬ青春時代であった。

 どうも最近、「余命二か月」を書いてからというもの、バンド時代の友人やら、運転手時代の友人やら、もっと昔の友人やら、いろいろな友人たちからメッセージをもらうようになった。みな異口同音に「時間を見つけて行くから」と言ってくれるのだけれど、それはもうほんとうに恐縮してしまうのだ。ここはもう千葉県のいちばん外れのK市のそのまた外れ、手賀沼のほとりで非常に不便なところである。来るだけでもたいへんなことだ。ぼくなぞのためにわざわざ時間と労力と交通費をかけてこんなところまで来てもらうのは忍びなさすぎる。「がんばれよ」と、ひと言メッセージをくれるだけでこちらには十分その気持ちは伝わるので、たいへんありがたいことではあるものの、どうかそれ以上のことはご遠慮いただきたいというのが正直な気持である。
 ともあれ、ぼくにはこんなに友人がいたのかと、あらためて思い知らされるここ数日なのであった。