食欲がまったくない

 雲ひとつない青空である。風もなく、うららかな昼だ。
 昨夜は久しぶりに四十度の熱にうなされてまいった。いったんそこまであがってしまうと、下がるのにもなかなか時間がかかる。点滴と飲み薬を併用して、今は何とか六度台まで下がってきた。今日も午後からお見舞いさんが来てくれるので、熱など出している場合ではないのだ。

 どうも食欲というものをどこかに置き忘れて来たようで、なかなかものが食べられなくて困っている。もう栄養の点滴も外してしまったので、少しでも食べられるものを食べていかないといかんのだけれど、なかなかこれが難しいのだ。
 まず生ものはダメである。それに加えて熱を通したものでなければダメだの、パッケージされたものでなければダメだの、あれこれ厳しく、いちいちお伺いを立てねば食べられない。
 加えてこちら側の食べる都合というものがある。まず食べたいと思えるものが極端に減った。食べたい、というよりも、何なら食べられるのかを探すのがたいへんである。脳が食べたいと思っても、口が拒否する。脳と口をクリアしても胃が受け付けない。そんなことばかりなのだ。
 病院食はもう完全にダメである。ある日を境に拒絶反応をするようになってしまって一切受け付けない。食事時に匂いを嗅いだだけで気分が悪くなってしまう。最初のうちはうまいうまいと食べていたのに、変われば変わるものである。
 今日の昼は、サンドイッチを買ってきた。ハムサンドである。これもお伺いを立てて、生のきゅうりを抜けばよしということになったのだ。
 今日は脳はこれを食べたいと思った。口はひと切れ食べていっぱいになったが、何とかがんばって三切れ食べた。胃もがんばって受け入れた。
 まったく、食事が苦痛だなどとは生まれてこのかたはじめての経験であるので、とまどいつつ日々こまっているのだ。
 コンビニのくどい揚げ鶏サンドなどをうまいうまいとばくばく食べていたころがなつかしい。