ホスピスと在宅ケア

 寒い朝である。
 ロッカーの奥ふかくにしまい込んであった、四月にこの病院に初めて来たときに着ていたジャンパーを引っ張り出してミズキに行くときに着ているが、今朝あたりはそれでも寒い。
 相変らずの貧血状態でノロノロフラフラとしか歩けず、ミズキの帰りにはどこかで一回は腰かけて休まないと病室まで戻ってこられない。
 ぼくの白血病急性骨髄性白血病のM6というタイプで、別名を赤白血病と呼ばれ、白血球だけでなく赤血球も壊してしまうのだ。そして貧血になる。他院の医師が血液検査の結果をみて、まずこの赤血球の異常に気付き、ぼくに専門病院の受診を勧めたのだ。

 さて、余命二か月宣告を受けてしまったぼくであるが、気になることがひとつあるのだ。それは、この病室で最期をむかえたくない、ということである。この病院に不満があるわけではない。もちろん、医師や看護婦、その他スタッフにも不満はない。ただ、この、老いと病と猥雑さの充満した部屋で自分の命の最期をむかえるのは、ちと抵抗があるのだ。
 そこで昨今話題のホスピスについて調べてみた。ここK市にもいくつかホスピスがある。個室であったり、タバコや酒がOKであったり、温泉みたいな大浴場があったりと、なんだかここと比べると夢のようなところである。生保でも入れるらしい。転院するとしたら今の病院で最期の治療が功を奏さなかったら、ということである。
 ところがここに問題があった。輸血である。
 今のぼくは血球や血小板を作り出す能力がほとんどないので、ほぼ毎日の輸血に頼って生きている。けれども輸血というのは治療行為なのでホスピスでは行わない。ホスピスは治療行為は一切せず、処置はただ緩和ケアのみに限定されるのだ。これは在宅においても変わらない。では、在宅で輸血のみを行えるかといえば、なかなか問題が多く、それをやる医師はほぼ皆無だろうとのことであった。
 やはりぼくにはこの部屋がお似合いなのかなあ。