再発

 昨日の午後、主治医に呼ばれた。
 ナースステーション脇の小部屋にわざわざ机と椅子をセットしての呼び出しだった。
 普段の経過説明なら主治医のほうから病室にやってきて説明をしてれるので、ぼくは何事かとびくびくしながら部屋に入った。
 ひょっとして、禁を犯してミズキの森へ行っているのがバレて怒られるのだろうか。いや、もっといえばそこでタバコを吸ってしまっているのもバレていて、諄々と諭されるのだろうか。
 神妙な面持ちで待つことしばし、主治医と助手の先生が入ってきて、席についた。主治医の後には看護婦のえらいひとが書記官よろしくPCの前に座っている。
 主治医も妙に神妙な面持ちであった。

 ややあって、主治医は信じがたい言葉を発した。
「千葉さん、再発しています」
 そしてさらに言葉を続けた。
「このところ、あれこれ検査をしてきましたが、すでにかなりの割合で白血病細胞が血中に出現しています。血小板が増えないのもそのせいだと思われます」

 おいおい、ちょっと待ってくれよ。再発といったってまだ生着してやっと三週間目、入院治療すら終わっていないじゃないか。予後が悪いにも程があるだろうよ。
 ひとしきり今後の治療方針の説明を受けてから、ぼくはおもむろに聞いた。
「で、生存率は?」
 主治医はしばし考えた後、しずかに答えた。
「十パーセントを切ると思われます」
「治療がすべて効果なしだった場合の余命は?」
「二か月ほどでしょう」

 ぼくは黙った。そして考えた。これはもう死の宣告にひとしいのだなと。
 たとえわずかでも可能性があるうちは、希望を捨てずにがんばりましょう等と言うひとがいるかもしれないが、希望というのは、ある程度の確率で実現する可能性があるから希望なのであって、病気で治癒率が十パーセントを切るなどというものは、あなたはもうダメだけど、もしも奇跡が起きたら助かるかもしれないよ、程度のことだ。下手に希望など持ったら、手に入らなかったときに余計に苦しくなるだけである。ここはもうスパッときれいさっぱりあきらめるに限る。
 この病名を聞いたときに、一度はあきらめかけた命である。その後、種々紆余曲折を経てここまでなんとかやってきたが、またふり出しに戻っただけだ。
 そして今度のふり出しにアガリはない。