まだ二合目ですか

「先生、退院を山の頂上、つまりゴールに例えると、今の僕は何合目くらいにいるんでしょうかね?」
「そうですねえ……、二合目くらいじゃないですか?」
 ズッコケた。四月から入院してここまでやってきて、まだ二合目ですか??
「あ、それは生着をゼロ合目、つまりスタート地点としたらということですから」
 なるほど。主治医たちドクターはそういう感覚なのだな。生着は移植された造血幹細胞が勝手に棲みつくのであって、特に医者の出番はない。棲みつくのをじっと待つばかりである。彼らの出番は生着してから後のあれこれのトラブルや不調への対処である。
 ぼくのばあいは、まずこの長く続く高熱である。それと好中球はまずまずなのだが血小板がなかなか増えないことである。今はほとんと輸血でまかなっている状態だ。これらについては対処法があるらしいのでチェックしてもらって、早速さっそく対処してもらおう。
 ともあれ移植時の前処置による影響は薄くなってきたきたが、新しい血球との闘いである。

 それと、これは移植とはちょっと別の件だが、先日のCT検査で胆石のようなものが写ったらしい。石だかどうだかよく判明しないので、後日エコーで再検査するらしい。それと脾臓が肥大しているそうだ。移植前のCTではそうはなっていなかったらしいので、これも移植の後の影響のようだ。

 これらいろいろのトラブルをひとつひとつ原因を究明して対処するのが彼らの仕事である。何のトラブルもなくスムーズに終わるなどというのはごくごくまれな話だそうだ。だから、こういうこもああいうこともすべて想定内としたうえで、彼は「順調です」というのだろう。

 最後にもうひとつ質問をしてみた。
「発症をゼロ合目、五年生存を頂上に例えたら、退院というのは何合目くらいでしょうか?」
 かれはしばらく考えてから言った。
「やっぱり、二合目くらいじゃないでしょうか」