好中球千百

 昨日の日記を書くのを忘れていた。昼となく夜となく、うつらうつらとしている間に夜の本格的睡眠に入ってしまったようで、日記を書いていないことにも今日になって初めて気が付いた。ご心配の向きには申し訳ない。昨日も今日も、相変らず熱だるく元気にしているのでご心配なく。

 先日、廊下の、ケータイ使っていいよエリアで電話をしていたら、たまたま通りかかった看護婦が後でやってきたときに、「千葉さんて、とてもきれいな日本語を使われるのですね」と感心していた。
 はぁ? である。僕はそれほど言葉が上品なほうでもきれいなほうでもない。汚い言葉はいくらでも使えるが。たまたまその時話していた相手が弁護士だったのでいくらか丁寧な言葉で喋っていたかもしれないが、それとて人さまからお褒めにあずかれるほどのものでもない。
 さて、どう答えたものかと一瞬迷ったが、素直に「そうですか、ありがとうございます」と礼を言っておいた。

 昨日空いたベッドに検査入院のひとが入ってきた。糖尿病なのかな。あれこれ医師やら技師やらがひっきりなしにそのひとのところへやってくるのがうるさいが、それをのぞけば部屋はいたって静かでよろしい。ペッチャペッチャもカタカタもなくなったし、たまに遠くのほうで「アラヨッコラショォ」などと民謡の掛け声のようなものが聞えるのは相変らずだが、遠いのでさして気にならないのがありがたい。

 先ほど主治医が来たのだけれど、ぼくの熱の原因は細菌やウイルスの感染ではないことが判明したらしい。あとの可能性としてはGVHDの一環でどうのこうのと言っていたが、「はあ、そうですか。おまかせします」と言っておいた。無責任なようだがおまかせする以外に患者が出来ることはないのだ。
 好中球も、よっこらしょよっこらしょと少しずつ上がってきて、やっとこ千百まできた。今週はちょうど一日に百ずつ上がったことになる。がんばれがんばれ。がんばっておくれやコーチューキューくん。

 それはそうと、ぼくの向かいのひとが肺炎を発症したらしい。
 おそろしいことである。
 ぼくのような感染症に対して脆弱な状態の患者を、肺炎の患者と同室、しかも向かいに寝かせておいてよいものか。たいへん非常にまったくもって遺憾であるが、昨日のレントゲン検査で、ぼくには肺炎の徴候はみられなかったらしい。案外丈夫なものである。看護婦さんに聞いてみたが、向かいの方が特別に肺炎にかかりやすい治療をしているだけで、簡単にこちらに感染するというものではないらしい。
 はぁ、そうですか、である。
 わかったようなわからないような説明であるが、これとて、信じて任せてお願いするしかないのだ。