本日の好中球九百、血小板七千。

 生着から二週間が過ぎた。
 体温は七度五分。熱だるさがしつこく残っている。そして好中球がなかなか上がってこない。血小板も同じくで、毎日のように輸血をしている。なんだか体力がガクンと落ちた気がする。元気なようで元気がない毎日である。
 主治医に聞いてみたところ、この血球の上がり具合は特段珍しいことではないらしい。総じて順調だというのだから順調なのだろう。
 首回りや上半身に発疹がでてきた。これがGVHDなのか違うのか、生研を明日やるという。GVHDはこわいが、この程度ならまずまずいいでしょう。あたらしい白血球が仕事を始めているということだから。

 相変らずこの部屋には馴染まないのだけれど、何がそうしているのかわかった気がする。
 老いである。
 自分も五十五歳になってずいぶんと老いたつもりでいたが、六人部屋の他の住人たちはもっとずっと老いている。そしてそれぞれに毎日のように世話をしにくる配偶者らも同様である。カーテンの向うでひそひそ会話をしていても、物音をさせずに一人でじっとしていても、澱のように漂い部屋に充満している老いそのものに馴染めないのではないかという気がしてきた。患者同士の会話もほとんどない。唯一ぼくと、ぼくの向かいのベッドの高橋さんはカーテンを開け放っておくのが好きなので、まいにちひと言ふた事言葉をかわすが、他の住人たちは、挨拶はおろか、まったく会話というものを交わさない。

 隣のベッドのジジイが食事中といわず、それ以外といわず、入れ歯なのだろうか、ペッチャペッチャと汚ならしい音を発する。薄布カーテン一枚を隔ててペッチャペッチャはけっこう厳しいが、オヤジは明日退院らしい。よかったよかった。次にどういう人が入ってくるのかわからんが、ひとまずペッチャペッチャ地獄からは解放されそうである。
 しかし、この部屋で毎日何もすることもなく、じっと息を殺して過ごす日々は、まだしばらく続きそうである。