本日の好中球数、千二百

 好中球数は昨日より落ちたが、これは血球を増やす薬をやめたせいなので心配なく、また自然に上がってくるとのことであった。
 来週の水曜日にマルクの検査をやる。これは生着の確認程度の意味なのでべつだんどうということはない。またちょっと痛いだけだ。

 このところ睡眠の半分は日中、午前中を中心にうつらうつらととっている。午後になると比較的しっかり覚醒してくるのだが、午前中は目が覚めない。しかし点滴交換やら検温やら頻繁に看護婦さんが出入りして何等かの処置をしてゆくので、なかなかゆっくりは寝て居られない。浅く寝たり目覚めたりの繰り返しである。
 夜もそのぶん眠りは浅く、何度も目覚めてはトイレに起きる。が、しかし眠れるのだ。
 どうやらぼくもすっかり、昼も夜も気配を消して寝続けているじじい様たちの仲間入りしてしまったようだ。

 今日で痛み止めのモルヒネが終わる。モルヒネと聞くと、それはやはり麻薬の一種なのだからいかにもヤバい薬で、ヤバいが画期的に効き、投与すれば劇的に痛みが消え失せるのかと思っていたが、さにあらず、医療用モルヒネを痛みが少し軽くなる程度の最低量での投与なので、なんだか効いているのがいないのだかよくわからなかった。ただ、喋りも動きもせず、じっとしている分には痛みはなかったので、それなりには効いていたのだろう。それよりも、これをやめた後には激しい下痢がくると脅かされているのでそちらのほうが心配である。

 食事は、今は朝と晩だけ病院食を食べ、昼は抜いて、お腹が空いたら肉まんやどら焼き程度のものを看護婦さんに頼んで買ってきてもらっている。今はもうむかつきがあるわけでもなく、口内炎もほとんど痛くなくなり、何かを食べたいという食欲も普通にあるのだが、いかんせんここのまずい病院食に辟易して食べる気がしないのだ。最初のうちは美味しい美味しいと食べられていたのに、口が奢ったのか自然ななりゆきなのか、とにかく箸が進まない。

 部屋の移動は連休明けの十一日に決まったらしい。
 今度は七五一号室、一般病室六人部屋である。窓際だそうで、それだけが救いである。どうせ売店にもミズキにも行かれないなら、ずっとこの部屋に居たいものであるが、そういうわがままは許されない。この先もそれを望むならお金を払って個室に行って下さいよ、である。

 このところ、来る看護婦来る看護婦、異口同音に、「口内炎が良くなってお食事もとれるようになってよかったですね」とか、「この部屋から出られてよかったですね」とか言ってくれるのだが、そういうわけで当の本人は、あまりよかったです感を感じていない。

 ともあれ、この部屋での生活もあと三晩。痛くもつらくもなくなり、やることもなく、ただうつらうつらぼうっと過ごすのみである。大部屋に行ってから退院までのひと月強は、GVHDとたたかいながら、それなりに過ごせてしまう気がする。もっとも気を付けねばならないのは、下痢でうんこを洩らさぬようにしなければいけないことであろうと予測される。パジャマやシーツのうんこ染みも勘弁だし、うんこ衣類の洗濯も勘弁だ。
 一般病室は、室内にトイレがない。部屋を出て廊下を挟んだ筋向いの一般トイレまで行かねばならぬ。そして窓際のベッドはもっとも入口から遠い。おならと思って安易に出すとひどいことになりかねない。
 下痢、要注意である。