生着

「今日で生着ですね。肝臓の数値も昨日よりよくなっています」
「あ、そうですか。それはちょっとほっとしますね」
「ちょっとではなく、だいぶです」
 今朝の採血結果を持ってやってきた主治医との会話である。
 血球数は五百まであがった。毎日気にしているこの血球数というのは、何種類かある白血球の種類のうちの、好中球と呼ばれるものの数である。これが血液一マイクロリットル中にいくつあるかという数値だ。
 生着というのは、移植された骨髄中の造血幹細胞がぼくの身体に棲みつき、血液を作り始めたということである。当初の見込みより少し時間がかかったが、なんとか生着をみたのでよかった。ここからは、今度は作られた新しい白血球が、ぼくの身体を異物とみなして攻撃をするGVDHとのたたかいになる。

「この部屋から出られるのはいつころになりそうでしょうか」
 よい知らせついでに聞いてみた。
「それはもう少し様子を見てからでないと……」
 そこはあまくなかった。