今日はしりの日

 今日も青空が広がって、日中はそこそこに暑かったのだけれども、朝はたいへんすがすがしかった。缶コーヒーを持って行ったぼくは、いつもよりずっと長い時間ミズキの下にたたずんでいた。

 午後から外出許可をうけて自宅にちょっと荷物を取りに帰った。無菌室で必要になりそうなものである。ついでに二軒となりの母親宅に寄り、一時間ほど茶など飲みながら話をしてきた。母親はぼくの顔を見れば喜ぶのであるから、茶飲みもささやかな孝行の一環である。はたせるかな事前に何の連絡もなく、突然のぼくの訪問に母親は、驚きながらも嬉しそうであった。

 隣のオジサンは、相変らず死にそうなか細い声で、眠っている間以外はずっと「はぁ~」「うぅ~ん」と唸っている。しかし家族が来れば元気に会話しているので、そこは不思議ながらも当面死ぬ気づかいはなさそうである。夕食時には娘さんがやってきて、あれこれと甲斐甲斐しく食事の世話をしていた。じつによい娘さん達である。

 昨日から薬が増えた。
 胃腸薬も含めてだが、朝だけで八錠もあるのだ。それに安定剤二錠も加えると十錠になる。それを全部手のひらに乗せて一気に飲み下すのもなかなかたいへんなのである。
 食事も無菌食になった。メニューは変わらないのだが、なにやらトレイ全体がビニール袋で覆われてご大層に運ばれてくる。そして目の前で看護婦さんが袋を取り除いてくれるのだが、なかなか面倒そうだ。それでも以前は無菌食といえば完全にレトルトのもののみだったそうで、それに比べれば一般食と同じようなメニューが食べられるだけありがたいのだろう。今日の夕食はオムライスであった。

 このあと、外科の医師が来て、ぼくのしりの穴を診るのだそうだ。移植前のあちこち検査の一環である。まあ見せるのも慣れてきたのだが、仕事とはいえ、他人のしりの穴などを見なければならないというのも、たいへんごくろうさまなことである。じっくりと存分に見ていってもらいたいところだ。