個室監禁まで、あと5日

 八月が今日で終わる。
 はやいものだ、はやいものだとは、もう何度もここで書き連ねてきたので今さらなのだけれど、もう明日から九月になるのである。
 台風が過ぎ去って青空が広がり、暑いには暑かったのだが、もう一時のようなバカみたいな暑さではなくなった。夏は過ぎ去りゆくのである。窓から見える青空と森の緑が目にまぶしい。

 昼前にマルク(骨髄穿刺=骨髄をちょっと採取する検査)があった。今回は主治医がやったのだけれど、彼がやるとちょっと痛い。
 僕は今、寛解に入っているはずで(白血球のうち悪玉が5%未満)、それをいちおう再確認するためらしい。
 午後からはソーシャルワーカーのひとがやってきて、限度額のことやら保険料支払いのことやらを話し合った。

 隣に入ったムナカタさんは、やはり僕と同年代なのかもしれない。そして奥さんだと思ったひとは、じつは娘さんであることが判明した。歳の頃なら三十歳くらいだろうか。声はもっと若い。とてもしっかりしていて、入院中のお父さんの面倒をよくみて、えらい娘さんである。こんな娘さんがいたら、それこそ父親冥利に尽きるのではないだろうか。
 当のムナカタさんは、家族が来ている間は元気にしゃべっているのだが、一人になると例の蚊の鳴くようなか細い声で、泣きそうに「はぁ~」「うぅ~ん」とうなりだす。そして暑いだの寒いだの、気持ち悪いだの痛いだのと言っている。彼もけっこうなひとり言屋のようであるが、よっこら氏と決定的に違うのは、その声量である。よっこら氏の場合は部屋中に聞えるような声でのひとり言だが、ムナカタ氏のそれは消え入るような声である。したがって隣でひとり言を言っていても、ほとんど気にならないのである。
 よっこら氏は、見舞いの家族などがやってきてもひそひそ小声で喋るというような気遣いはまったくない。今日、たまたま向かいのよっこらベッドと隣のムナカタベッドに一どきに家族がやってきたのだが、さすがに騒々しさに耐えきれず、ミズキに避難した僕である。

 本日、七メートルのTVケーブルと禁煙ガムを発注した。個室監禁への準備である。明日は外出許可を得ているので、自宅に戻ってボーズのスピーカーとトランクを持ってくるつもりである。トランクは退院時に使うのだ。
 そんなこんなで、あれこれと準備をしつつ、個室監禁まであと五日となった。