微熱、いまだ下がらず

 台風一過の青空で、たいへん暑い一日だった。
 暑くてもミズキの木陰は涼しい。そこまでもが暑くなったのは、今年はまだ一回だけである。

 昨日の朝、平熱に下がったと思った体温はまた上がり、微熱を通りこして三十八度くらいまで上がった。今はまた平熱に落ち着いているが、そんなことがもう一週間も続いており、さすがに心も身体もぐったりと元気がない。元気がないのか、またフラストレーションが爆発する寸前なのか、自分でもよくわからない。ただ、前回のように頭がパッカーンとイカないように祈るばかりである。
 ともあれもういい加減に熱も治まってくれないことには困る。
 主治医は、次の治療前にはまた外泊をはさんでくれようとしているが、車もなくなっていまった今、外泊といってどこへ行けるものだろう。アパートに帰ってもろくなこともないし。身体が弱っている今、立っているだけでもつらいのに、重い荷物を背負って電車やバスで長距離を移動するのは至難である。

 そんななかでがんばって、長編の最後の推敲を終えたが、もう一回読み直しをする予定である。明日からやることにして、今日は一日、本を読んで過ごした。友だちが持ってきてくれた、谷崎の『痴人の愛』である。さすがに文豪だなと思わせる一作だが、文豪の何が文豪かといって、文章のうまいのはもちろんのことだが、独自の世界観を作り上げられるかどうかという、文章以外の部分での才能というか能力にかかっているものではないかと思う。文章というのは、ただ単にそれを表現するだけの手段に過ぎないので、普通に日本語が読み書きできれば十分なのだ。それほど難しい言葉を使う必要もない。
 そういう独自の世界を、僕も作り上げてみたいものである。