今日は手賀沼花火大会

 一年中で一番暑い時期がやってきた。僕がこの病院にやってきたのはまだ肌寒い四月のことであったから、もう四か月も経ってしまったのだ。早いものである。抗がん剤治療ももう四度もやった。
 病室の中は快適な温度に保たれているが、一歩外へ出るとおそろしく暑い。ミズキの下はいくぶん涼しい風が吹き抜けるのだが、そこへたどり着くまでの駐車場の往復が暑い。ハゲ頭がじりじりする。しかし日に何度かここを通るおかげで生白かったハゲ頭はいい具合にやけた。

 今回の抗がん剤はまだ副作用らしい副作用が出ていないが、血球が落ちてきたので今日から輸血がはじまった。手始めに今日は血小板の輸血である。またつなぐ前とおわった後に合掌している。
 今がいちばん血球が落ちているので熱発などしやすい時期だが、何とかこのままクリアできればと願っている。

 隣のよっこら氏が今日から二泊三日で外泊に出た。おかげでやっと静かな環境になった。一日中、よっこらしょ、どっこいしょとひとり言を聞き、入れ歯をカタカタやり続ける音を聞かされるのはうんざりである。このままもう戻って来なくてもよろしい。

 今日は手賀沼の年に一度の花火大会の日である。僕らの病室からは正面に見えると思うのでたのしみだ。味気なく変化の乏しい入院生活の、せめてものなぐさみになるだろう。

 心のほうは順調に落ち着きを取りもどしつつあると思うが、ミンザイ代わりにもらっている強い薬を飲めば昼間も一日中ふらふらぼうっとしてしまうし、飲まねば飲まないで眠りが浅くなり、やはり日中、睡眠不足でぼうっとしてしまう。なかなかうまい具合にいかないものだが、睡眠不足のほうがまだましなので、強い薬はちょっとひかえようと思っている。

 今日、車屋が僕の車を持って行った。二束三文で売ったのだ。ポンコツ軽貨物だけれど、一年近く一生懸命仕事をした車なので一抹の寂しさがあった。持って行かれる車を病室から見送りながら、ちょっとかなしい気持ちになった。しかしこれも治療のための手段なので致し方ない。
 さようならポンコツ号。