梅雨とコーヒーのはなし

 今日も晴れである。朝は霧がかかっていて夜には雨が降るらしいが、日中は今日もみごとに晴れている。
 この分では、関東では今年は梅雨はなかったことになってしまうのではないかと思って平年の梅雨明け日というのを調べてみたら七月二十一日だそうで、あと一週間ではないか。どんなに遅くなっても今月中には明けるのだろう。
 だいたい梅雨入りだの梅雨明けだのと気象庁が発表したところで、天はそのような人間の発表などとは無関係にいとなんでいるのだろうから、「ふん、今年は降らしてやらんもんね」という年もあるだろうし、その逆もまたあるのだろう。ともあれ、梅雨が「多雨な時期」であるとするならば、少なくともここまでは関東には梅雨がなかったのは確かである。
 
 さて、おかげさまで体調もほぼ回復し、今日あたりはすたすた歩けるようになったし階段も上れるようになってきたので、コーヒーも買いに行けるようになったのだ。
 入院してからというもの、僕はやたらとコーヒーを飲むようになった。少ない日で二、三杯、多い日には五、六杯は飲むだろうか。
 僕がここで飲むコーヒーには、並、上、特上の三種類がある。
 
「並」は、インスタントである。それもネスカフェのいちばん安い黒いラベルのものだ。小ぶりのビンで三百円程度なので一杯にして三十円くらいだろうか。しかし味が薄いというかなんというか、いくらよけいに粉を入れてもさっぱりコーヒーの味にならないので困る。
「上」は、病院一階のコンビニのコーヒー、一杯百円だ。これはまずまずコーヒーの部類に入るだろう。
 そして「特上」は、なんと自販機のものなのだ。これは自販機ながら一杯ずつ豆を挽いて淹れるので非常にうまい。しかし自販機のくせに一杯二百円ととんでもなく高い。コンビニで一杯百円で買えるものが自販機で二百円はどうなのよ、ドトールコーヒーなんか店で飲んで二百二十円だぞと思わざるを得ないものの、このうまさには負け、ほんとうにうまいコーヒーが飲みたい時には誘惑に負けてつい買ってしまうのである。
 
 この自販機、ボタンを押すと音楽が流れだし、豆を挽くところから、カップに落してフタをして、取り出し口に出てくるまでの中の様子がすべてモニターに映し出されるのがまたすごい。そんなところに金をかけないでいいから、ちょっと安くしてもらえないかと思うのだが、この映像がないとコーヒーが出来あがるまでじっと待つのがつらく、いくらうまくてもつい買わなくなってしまうかもしれない。さらにこの映像を見ることによって、より「これはうまいんだぞ感」が増しているのかもしれない。だとすれば見事に自販機会社の策略にはまってしまっていることになる。しかし悔しいがうまいのはたしかである。飲めばわかる。いや飲まなくてもカップのフタを開けただけでわかる。
 
 そんな特上コーヒーなのだが、いかんせん一杯二百円は高いので、一日一杯までと決めているのだ。
 僕は、以前はネスカフェゴールドブレンドあたりでもうまいと思えたもんだが、コーヒーは殻とか渋皮とかあれやこれやの雑味が混ざってはじめてコーヒーらしい味や香りになるわけで、そういうものを飲みつけてしまうと、いくらコーヒーの味だけをキレイに出していても、それでは何杯入れてもコーヒーらしくならず、さっぱり満足できなくなってしまうのである。
 
 ということで今朝もまた、ミズキの帰りに自販機の前で映像を見、音楽(コーヒールンバ)に合わせてリズムを取りながら、この高級自動販売コーヒーを買ってしまったわけである。
 たぶん明日も買うのだろう。そして明後日もその次も。