窓空諸情

 今日も、梅雨はどこへいってしまったのかという天気で、青い空に白い雲がぽっかりぽっかり浮かんでいる。木陰の風がさわやかで、空の青と雲の白と、ミズキの緑と風と、それらがなんとなく、移りゆく季節を感じさせていた。
 二十四時間つながれていた水の点滴がなくなって朝晩九時の抗生剤のみとなり、これは三十分ほどで終わるので、点滴からはほぼフルフリー状態になった。ミズキに散歩に行くにも、やっと手ぶらで行けるようになったので、これはたいへんうれしい。

 発熱以来、眠る時間、起きている時間、その他ぐだぐだになっていた生活リズムがやっともとに戻りつつある。
 しかし今朝はミンザイの持ち越しか、朝食が終わっても眠くて仕方なかった。十時すぎにシャワーに入ってやっとこどうにか目が覚めてきたので、重い腰を上げて洗濯をした。ゲニがひどく、早朝からシャワーまでの時間は、ベッドで眠っているかトイレにこもっているかの行ったり来たりであった。
 シャワーで髪を刈ろうと思っていたのを、すっかり忘れてしまった。バリカンもしっかり充電して用意してあったのに。前回刈ってから十日もたって、ぽつぽつまばら伸びてしまって、すっかりちびまる子ちゃんのともぞうじいさん状態になっている。明日こそしっかり刈って御前さまに戻ろう。
 
 副作用は、しゃっくり責めがきている。
 しゃっくり十回の後に数秒の呼吸停止がたまにやってきてちとつらいが、前回ほどではない。
 今日、主治医と話していたのだけれど、移植までの間にもう一回戦根固め療法ができそうだというから、もう一回はまたこれらをやらねばならんことになるが、まあそれが今の僕の仕事だから仕方がない。
 
 午後、歯医者が来て入れ歯の調整をしていった。三日前にまだ熱が下がり切らぬ日に持ってきた入れ歯である。入れ歯など人生初であるので、これが合っているのかいないのかよくわからないが、こんな大きなものを一日中口の中に入れているのは、ちょっとしたストレスである。さらに、食後の歯磨きだけでもおっくうなのに、加えて入れ歯の手入れまでするのも面倒千万である。
 
 よっこらK氏が、あんまり「よっこらしょ、どっこいしょ」と一日中言っているので、
 「よほど身体を動かすのがつらいのですね」と言ってみたら、
 「いやあこう食っちゃ寝してたらねえ。ここ、身体動かすところないんですかね、ジムみたいな」ときた。
 リハビリならわかるが、ジムのある病院などあるわけがないではないか。
 よっこら氏には、皮肉は通じなかったのであった。

 僕の母親がよく「品」という事を口にしていたのだが、この歳になるとそういうことの大切さが身に沁みてわかるようになってくる。
 男女を問わず、品のよい人というのは一緒にいると気持ちがいい。同じことを言ったり行ったりしても、品のある人だと嫌味にならない。
 けっして人のことを言えた自分ではないのはよくわかっているのだけれど、あまりにも品のない人はちょっと勘弁してもらいたい。そういうことは、おそらく字のとおり育ちの中で育(はぐく)まれるものだろうから、そのご本人に言ったところでどうなるものでもないのだろうけれど。
 まあせいぜい人のふり見てで、自分は少しでも人さまに不快な思いをさせたくないなと思うのである。
 
 窓側になったベッドから外の景色や空など眺めながらぼんやりと、そんなことやあんなことをあれこれと思ったのであった。