今朝のしり街道通行情報

 関東もとうに梅雨入りしたというのに、今朝も青空である。
 梅雨明け三日とはいうが、梅雨入り三日というのは聞いたことがない。雨はどこへいってしまったのだろう。
 
 今朝も、ジジイがカーテンを勢いよく開ける「シャーッ」という音で目が覚めた。しかし今朝のそれは窓のものではなく、ベッドのカーテンを開ける音だったので、まあ文句も言うまい。そのくらいでいちいち文句を言っていたら、いつぞやのナタジジイと同じことになってしまう。ナタジジイの話はたしかすでに……したと思う。

 時計を見たら五時十二分だった。
 シャーッですっかり目が覚めてしまったので、しかたなくトイレに立った。するとなんと、我がしり街道に通行車両の接近を感じるではないか。
 じつは秘密にしていたのだが、また数日通行不能になっていたのだ。むろん……といってはなんだが、街道口もまた半瓦解通行困難状態であった。
 
 ここで仮に一日の通行量を十台としてみよう。
 昨日、四日ぶりに五台ほどの通過をみた。けれども通行口が半瓦解状態なのだから、当然多大な通行痛をともなったが、まずまずめでたいことである。しかしまだ奥のほうに滞留車両が三、四十台ほどいる気配であった。
 そこへ今朝のこの接近である。
 通行口は昨日の通行で困難度を増していたが、この好機を逸しては次にいつ接近があるかわからない。それを待っている間に、また先頭車両郡が凝固凝結大団子化してはたいへんである。僕の排便は、今やハレーすい星なみの接近観測貴重随喜状態なのである。
 こうなればもはや通行痛だの通行障害だのとは言っていられない。接近が消えぬ間に通行できる分だけ通行させねばである。がしかし部屋のトイレはすでにくそジジイに占領されていた。いちいち間の悪いことである。事態は急を要していたので、僕はやむなく部屋を出て廊下のむこうの共同トイレへ急行すると一大勇猛心をふるって意を決し、大のドアを開けた。

「むむっ、むむむっ」
 痛い……。はげしく痛い。
 痛いが……、来ている。確実に来ている。
 
 ここでひるんでは男子の名が泣くというものであろうと、歯を食いしばっていきんでみた。痛みをのがすために「ひっひっふう」などもやってみた。
「んむう!」
 そのかいあって、まずは先頭一台が通過に成功した。
 さらに「ひっひっふう!」
 呼吸を整え、気合とともにもう一台。耐えがたい激痛であったが、なにくそ負けてなるものかと、さらにもう一台。通過のたびにうめき声が出そうになったが、また先日のように外にいる人らが驚いて騒ぎになってはかなわんので、そこは必死にこらえた。

「はふう……」
 よおし、今日はこのくらいで勘弁してやろう。
 大きく肩で息をし、ウォシュレットを最弱にしてそおっと洗浄した後に通行量の確認をしてみたら、なんと僕が三台だと思っていた車両は、「おおお!」、優に二十台分はあるではないか。
 勝ったね。勝ちましたね。大勝利おめでとうございまーす、ですね。
 僕はひとり勝利に歓喜しつつパンツをずり上げ、トイレを出ると、一歩ごとに痛むしりを押さえ、壁をつたって部屋へとむかったのであった。