間もなく二週間経過

 ジジイ脱糞事件以来、僕は食事中にジジイがトイレへ向かうと、箸を投げ出して部屋の外へ退避するようになった。
 しかしジジイはトイレがやたらと長い。五分から十分くらいかかる。その間ずっと外で待っているうちに、すっかり食欲はうせ、そのまま食事を下げてしまうこともまま生じるようになった。
 しかし部屋にトイレがあるのに使うなというわけにもいかず、出もの腫れものなわけであるからやめてくれとも言えず、そんなら自分が差額料金を払って個室へいくべきなのかとも思えるので、忍の一字でじっとがまんする日々である。
 
 朝からの雨があがったので、裏の森へ行ってみたら、竹の根元にカタクリの花が咲いていた。薄紅色の可憐な花であった。カタクリの花は濃い紫色が多いので、薄紅色のカタクリはめずらしいが、あれはたしかにカタクリであったと思う。またミズキのときのようにいい加減なことを言うと叱られてしまいそうであるが。
 そして竹はすくすくと伸びていた。雨後の筍とはよくいったもので、生えたての竹の生長の早さは驚きに値する。先日まで子供だと思っていたものがもう立派に十メートルを超える高さになり、根元も太くなってすっかり大人の竹の風格になっていて驚く。
 竹林の竹たちはみな、雨を吸って重そうにしだれていた。
 
 竹というと九州を思い出す。
 本州を西へ西へとひたすら進み、瀬戸内海をこえて山口県あたりから、山に生えている竹のようすが変わってくるのだ。本州の竹は先ほどいったようにたいてい全体がしだれている。そして枝もしだれているものが多い。けれどもそのあたりまでいくと、どの竹も天に向かって直立して伸びている。枝もしっかり上を向いていて、関東のものとはぜんぜんようすがちがう。なんだか一本一本が元気いっぱいにバンザイしている感じなのだ。
 そして九州に入ると、さらにそんなバンザイ竹がひと山全体を覆いつくしていたりする。杉やら広葉樹やらはバンザイ勢力に駆逐し尽されてしまったかのごとく、あの山もこの山も天に向かって屹立した竹だらけなのだ。まさに九州はバンブー王国であるのだ。いや、バンザイ王国かもしれない。あれはバンブーではなく、たしかにバンザイである。
 
 さて熱発から二日たった僕であるが、今はもう熱も三十七度台で落ち着いて、気分もすっきりしている。歩くとちょっとしんどいので、まだ本調子ではないのだろうけれども、まずまず寝込むこともなく、椅子に座ってあれこれ書き物などしている。苦労して受信できるようになったフルセグハイビジョンテレビなどもたまに見ながら。
 しかし、どういうわけかこのところひきひきが顕著である。とりたてて嫌なことがあったわけでもなく、何がストレスになっているのかわからない。ジジイのトイレ攻撃も毎回というわけでもないし。
 加えてまた、しりが痛くなってしまった。便秘のほうはたいしたことはないのだが、しりが痛いのでモノが出る時につらい。チューブの軟膏を注入し、モノがやわらかくなる薬と下剤を飲みつつ引くのを待つばかりである。
 
 明日で抗がん剤終了後二週目がおわる。
 三週目にはいれば徐々に血球数も上がってくるので、それもこれももうちょっとの辛抱である。しりはどうだかわからないが。