造血幹細胞はえらいのであった

 今日は朝から熱が三十七度台で落ち着いている。気分はすぐれているのだが、まだ歩くと少しくたびれる。このまま平熱まで下がればどうということはないのだが。
 
 今週が抗がん剤終わりから二週目にあたるのだが、このくらいがいちばん血球が下がる時期で、今朝の検査では白血球は最低三千三百なければいけないところ、六百しかなかった。それ以外に赤血球も血小板もガタ落ち状態である。これは薬がちゃんと効いているただしい状態なのだが、はやりこうして熱が出たりするのだな。今回は大丈夫かと思ったのだが。
 また、前回の時はこのくらいの時期に髪がごそっと抜けたのだが今回は抜けていない気がする。それとも御前さま刈りだから抜けているのに気づかないだけだろうか。ごの御前さまもそろそろうずら頭に伸びてきたので刈らねばだ。
 
 さてこの血球のいちばん少ない時期にはせっせと輸血がなされる。自分の血球がないので人さまのものを入れないとやっていかれないのだ。今日はオレンジ色の血小板と赤い赤血球のふたつである。ふかく合掌し、一滴残らず大切に頂戴している。
 
 しかし抗がん剤でこれだけ血球が少なくなってしまっても、三、四週間もすればまた復活してくるのだから、人間の身体というのはタフにできているものだ。造血幹細胞はきっと、「あれえ? なんでみんないなくなっちゃったんだよう。ふざけんなよ」などと文句を言いながらも、せっせと突貫作業で血球を作っているにちがいない。そして一定数まで達したところでまた抗がん剤でやられる。「なんだよせっかく作ったのによう」である。しまいに他人の身体に移植され、「あれぇ? ここどこだ? あ、でも作んなきゃ」といって一生懸命作ってくれるのだから、けなげこのうえないというか、何という仕事熱心なやつかと感心する。人間の身体というのは、どの部分をとってみても、みなこのくらい仕事熱心にやっているのだな。だらしがないのは身体の総体である本人だけかもしれない。
 
 というわけで、熱から一夜明け、テレビもきれいに映るので舛添氏の会見などを横目でながめつつ、点滴のチューブにつながれているのである。