ストレスとデパス

 僕がデパスを飲むようになってから、もうずいぶん久しい。
 チエノジアゼピン系の精神安定剤である。後発でエチゾラムとしても出ている薬だ。手軽なミンザイとして処方されることもあるから、飲んだことのある人も少なくないと思う。
 
 僕は以前、うつで心療内科にかかったときに処方されて以来、心の苦しいときに頓服(とんぷく)として飲んでいる。よく効いて楽になるが、あまり飲むとぼうっとしてしまうので、本当につらいとき以外はなるべくがまんするように心がけている。
 飲む、飲まないにかかわらず、なくなると不安になる。ストレスのひどい毎日にデパスが一錠もなくて、それはそれはつらい日々を送ったことがあるので。
 なので、精神科(心療内科)とデパスとは、この先どこに住んでもおそらく一生縁が切れないと思う。
 
 うつと精神科で思いだしたが、いまだにそういうものに対して偏見をもっているひとがいるのがびっくりである。それもけっして高齢者というわけではないのだ。
 そのひとは、うつは弱いからなるのだと信じ、そのひとの彼女は、安定剤を飲んでいるひとのことをさして、「あのひと、薬やってる」と言った。ちゃんと処方された薬を飲んでいるひとに対してである。
 
 ちょっと耳を疑いましたね。あなた、それは別の「クスリ」に対して使う言葉でしょう。やばいやつでしょう。どこで聞きかじったのか知らないが。
 無知はこわい。われわれをそういう目で見るひとが、いまだにいるのだということを覚えておきつつ、はなしをすすめる。
 
 僕にはストレスのサインがあるのだ。
 顔がひきつるのである。
 自分の意思に関係なく顔の筋肉にぎゅーっとちからが入って……、どういったらいいだろう、痛いときのような表情になってしまうのだ。
 もちろん自分でストレスを感じているときもなるし、そうでないとき、つまり自分ではわからないが、無意識でストレスを感じているときにもそうなる。ひと前でなるとちょっと恥ずかしいが、ひきつりがきたら、「ああ、僕はストレスを感じているのだな」というサインになるわけである。
 僕はこれを「ひきひき」と呼んでいる。
 
 一回ひきひき程度ならストレス度合はまだ軽いので、様子をみてデパスはまだ飲まない。そして気分転換ができる状況ならやってみる。
 短時間に何度もひきひきするようなら一ミリ飲む。
 もっとひどくなると、ひきひきしたまましばらく戻らなくなってしまうのだが、そんなときにデパスがないと、それはもうつらい。車を運転中などにあまりひんぱんに出るようだと、あぶないので運転をやめてしまうこともある。

 おもしろいことに、最近ミズキの下に行ったときにフッと一回だけこれが出ることがたまにある。ミズキがストレスの原因になるはずはないので、おそらく部屋にいるストレスから解放されたときにフッと出るのだろう。そういう出かたもあるようだ。
 
 そして先日は、ストレスによるしゃっくりがひどかった。マシンガン氏である。
 しゃっくりの最初の原因は薬の副作用だったのかもしれないが、それはきっかけにすぎず、その後は病室にいるとひどくなり、病室を出ると止まるようになった。そしてマシンガン氏がいなくなったらとたんにおさまってしまったので、あきらかにストレス性のものであった。
 そのころはデパスを飲む回数も日に二、三回と多かったが、今は一回飲むか飲まないかである。
 
 ともあれ、ストレスの出かたもいろいろあって興味深い。できればストレスなどないに越したことはないが、こういう二十四時間共同生活かつ自由制限あれこれ山盛り付きともなると、どうしてもそういうわけにはいかない。今後くそジジイ氏等からのストレスが増大しなければよいのだが、それはもうただただ祈るばかりである。
 とりあえずデパスだけはいくらでもある場所なので、それだけは安心であるが。