入院生活は、忍の一字なのだ(抗がん剤五日目、最終日)

 朝から雨がしとしと降っていた。
 抗がん剤は今日が最終日。今日も湿疹のかゆみと劇症しゃっくりがとまらない。その薬の影響で眠くてしかたなく、一日じゅうベッドでうとうとしていた。
 やっとこさきほど起き出して、ちょうど雨もあがっていたのでミズキのところへ行ってきた。すると不思議なことにしゃっくりがぴたっととまった。ところがまた部屋に戻ってくると再開する。これはひょっとすると精神的ストレスが関係しているのではないかとふと思った。
 
 ストレスの元凶はおそらく……、僕の隣のマシンガン・ザマ氏であると思われる。
 どうもこのひとの脳内思考の五分の四くらいは不満と文句でできているようで、先日のイーダさんへの文句のほかに、僕にもくだらないことで文句を言った。そのとき僕はかゆみとしゃっくりで多少イライラしていたので、しつこい彼の言いぐさについ言い返してしまった。
 その場はまあ直後に互いにあやまって穏便に終わったのだけれど、この男はその後も僕の文句をナースステーションあたりに、僕の話声が大きいとか、僕がベッドのカーテンをいつも開けているとか、ちまちま言っているらしい。
 さすがにそれはわがまま勝手なご不満であろうから、そこまでご不満なら差額を払って個室へどうぞである。
 どうもこのひとがやってきてから、すっかり部屋の空気がわるくなってしまった。それまでは、僕とイーダさんとタカハシさんの三人で椅子を並べて歓談する時間などもあったのに。
 
 と、ここまで書いてふと思ったのだが、そういうマシンガン氏に対してこうしてくどくど文句を言っている自分というものまた、同じような文句男なのではあるまいかと。いやだいやだ。
 ともあれ左側のカーテンごしにじわじわ迫ってくるストレスにデパスで対抗しつつ、劇症しゃっくりとかゆみと戦う一日であった。

 入院生活とは、「忍の一字」であるわけですね。