無収入ダメダメ男の医療費対策は、骨がおれるのだ(抗がん剤三日目)

 バタバタと忙しい一日だった。
 午前中はミンザイの持ち越しとたたかいながらあさめしを食べ、モテスリム部長の回診をうけ、シャワーに入ったらもうひるめしの時間になり、午後からは新人看護婦の点滴チューブ消毒の練習台になり、それが終わったらソーシャルワーカーさんがやってきてあれこれ相談。
 
 骨髄移植というのは保険適用外なのだろうか、白血球の型の検査から骨髄バンクの費用まで直接請求が来るらしい。それらの費用を免除してもらうための書類あれこれの準備をその後にやった。
 
 そういう作業をここで行うのはとても骨が折れる。書類ひとつ入手するにしてもいちいち郵送で申請しなければならない。本人確認資料やら郵便小為替やら申請書の手書きやら……。小為替だけは郵便局へ行かねば買えないので、どうしたものかと悩んでいたら、ソーシャルさんが買ってきてくれるというので平身低頭平蜘蛛状態でお願いした。前回はたったこれ一枚を入手するために、わざわざ横浜の母親にお願いして買ってきてもらったのだ。どれもここから出られさえすればちょちょいのぱで終わることなのだけれども。
 
 ここでは、電話一本かけるにも電話場まで行かねばならない。
 書棚も引き出しもないから、あれこれ書類をどこにしまったか、いちいち探し出すのにも骨が折れる。
 デパス四錠とイップク三回でなんとか乗り切り、今日作成できる書類をひととおり作成し終えたら、もう夕方五時をまわっていた。もうじき夕食である。
 
 今日は曇り空なので、手賀沼も鉛色である。しかし風が涼しかったのでミズキの根元は心地よかった。ポンプつき点滴棒を押していくのはたいへんだけれど、やっぱりそこに座ってイップクするときだけは心が落ち着けた。
 
 正直に申し上げよう。僕は今回の治療費のために生活保護申請をしなければならないのだ。仕事を辞めて無収入になってしまったし。新宿にボロマンションがあって今ひとに貸しているが、資産は全部手放さねばならないので、これは売却せねばならない。当然わずかながらに毎月入っていた家賃収入はなくなるが、生活保護が認められれば、すべての医療費は無料となる……、はずなのだ。
 
 入院直後に主治医が、「今の日本では、どんなにお金がなくてもちゃんとした医療がうけられないということはありませんから」と言ってくれた。そしてソーシャルワーカーさんが親身になって相談にのってくれ、動いてくれて、今それらあれこれの手続きをすすめているところなのだ。けれどもこういうものの常として、免除されるとか無料にしてもらうためには、それなりにたくさんの書類をそろえていちいち申請しなければならない。そう簡単にあれこれ免除にはならないのだ。骨がおれるがいたしかたない。
 
 無収入ダメダメ男の闘病記として、同じような境遇にあるひとがもしいたら何かの参考になればと思い、あえて書きとめておくことにする。