抗がん剤投与、第二回目

 病室の窓から見える手賀沼の水面が、晴れた空を映して青く光っている。
 今シーズン一番の暑さがいきなりやってきて、関東地方ではあちこちで最高気温が三十度に達し、熱中症で倒れたひとが続出したらしい。
 といっても、病室の中はエアコンが効いているので、外がそんなことになっているとはまったく気づかず、いつもと変わりない時間が過ぎてゆくばかりである。
 
 朝、お菓子のイーダさんが外泊から戻ってきた。彼らしく、お菓子やらパンやらを大きな袋いっぱいに詰めて、にこにことご機嫌であった。さっそく彼の血液検査が行われ、その数値も非常によかったとかで、にこにこ顔がさらににこにこにこになった。よかったよかった。
 イーダさんのにこにこにつられてつい大きな声でしゃべっていたら、向かいのタカハシさんが、「元気がいいねえ」と言いながらカーテンの奥から出てきた。どうやら僕は寝ていたタカハシさんを起こしてしまったらしい。いかんいかん。ひとのメイワクになってはいかん。
 それと対照的に、マシンガン氏はひっそり息をひそめている。
 病室には平和と落ち着きと、ちょっとの活気が戻ってきた。
 
 一方僕は、今日から地固め療法――二回目の抗がん剤投与がはじまった。投与といっても普通の点滴となんら変わらないのだけれども、このゴロゴロ点滴棒に数本のチューブで二十四時間、睡眠中までつながれっぱなしなのがうっとうしい。そして点滴棒にはまたポンプマシンが装着された。これ、屋外に出ると、すぐにティルトや充電警告がピコピコうるさく鳴るのだよなあ。
 それならばと、今日は一日部屋にいる特訓をやっている。ついでに気まぐれ一日禁煙も実施中である。ただいま十九時をまわったところだが、ここまではほぼ完ぺきである。なにするものぞである。
 
 さて、部屋にいるということは、僕の場合はベッドのわきの椅子にすわってPCに向かっているということである。そうすると当然、何か書きたくなって、こうやって今日も数本アップしてしまうことになる。おそらく今日から五日間、抗がん剤投与が終わるまではそんな毎日になると思われる。もうしわけない。
 
 ところで、今回の抗がん剤は前回のものとはちょっと違うものが使われ、それがなにやら青色をしているので驚いた。おそらく他の薬剤と間違わないようにわざとそういう色づけをほどこしてあるのだろうが、紺屋の藍のような色はいかがなものか。そういうものを体内に注入される者としては少々疑問を感じざるをえない。
 血小板は黄色、赤血球は赤、そしてこの抗がん剤が青。赤青黄の三色がそろった。三つ同時に点滴棒にぶら下げたら、信号か、どこぞの国の国旗みたいになるだろうか。
 青色抗がん剤は三十分ほどで落ちきってしまうのだけれど、その直後にトイレに行ったら緑色のしょうべんが出て、さらに驚いた。
 
 一日じゅうチューブでマシンにつながれ、青やら赤やらの液体をどんどん注入され、緑色のしょうべんをするようになり、やがて僕はサイボーグになってしまうのではないだろうか。
 まあサイボーグでもハンバーグでも、生きていればもうけものであるが。