今日もマシンガン炸裂なのだ

 世の中には、教え好きというひとがたまにいる。
 こちらが聞いてもいないことを、ああですよ、こうですよ、こうしたらいいですよ、と親切丁寧に教えてくれるひとである。もうちょっと親切なひとになると、こうしなきゃだめですよ、などと強制的アドバイスをくれたりする。
 
 マシンガン・ザマ氏がまさにそのタイプである。
 彼は僕と同じ病気ですでに骨髄移植をしているので、僕より先輩である。なのでいろいろ聞きたいことはあるのだが、ひとつ聞くと十くらい答えが返ってきて、しかもそれがいちいち前述のようなアドバイスなので、ずっと相づちを打ち続けるのも少々つらくなる。したがって最近はこちらからものを聞くことは遠慮している。けれども遠慮していても、彼が他の人に語っているのを横で聞いているだけでおおむね必要な情報は得ることができるのだ。
 
 それによると、移植時の副作用として……、
一、味覚がなくなる。
 これは前のひとも同じ症状が出ていたので、かなり頻繁に起こることなのだろう。辛そうである。
二、筋力が著しく落ちる。
 狭い無菌室で個室監禁状態になるのでほとんど動かない生活になり、ちょっと長い距離など歩けないほどに体力が落ちる。だから意識的に筋トレなどをする必要がある。
三、移植直前の処置はかなり負担がかかる。
 普通の抗がん剤治療よりも強い薬剤を使うので、ここはかなりつらいらしい。
四、無菌室は個室なので多床室より気が楽である。
 これはひとによりけりだろうが、テレビや音楽の音はスピーカーから出せるし、電話も部屋でかけ放題なので多床室より気をつかうことがないらしい。もっともだ。
(と言いつつ、マシンガン氏はこの病室でも平気でしょっちゅう長電話をしているのだが)

 なるほどそうか。
 そこはいずれ僕もゆく道であるのでたいへん貴重な情報である。しかし隣で見ているかぎりそれ以外に目だった症状はみうけられない。毎日の生活もそれほどつらそうにはみえない。もっともGVHDというのは一年くらいたってから発症する症状もあるので、そこのところは何ともわからないが。
 ともあれ、甘い考えかもしれないが、この程度で済むなら移植のリスクもそれほど恐れるに足りないのではないかと感じる。
 もうちょっと詳しく聞きたい部分もあるのだが、そういうわけで聞くに聞けないのである。

 先日、彼女が二度目に来たとき、ちょうどカーテンごしに氏のマシンガンが炸裂している最中だった。僕が身ぶりでそれと示したら、彼女は僕がここに書いている以上だと、そのマシンガンぶりに感心した。だから決してこれが誇張された表現ではないことはおわかりいただけるだろう。
 
 今はお菓子のイーダさんが外泊中なので、僕とマシンガン氏と無気配のタカハシさんのちょっと変則的三人部屋となっている。はやくイーダさんに戻ってきてもらいたい。イーダさんも話好きなのだが、彼の場合は癒しになるのだ。イーダさんとマシンガン氏がいてやっと部屋全体のバランスが保たれる気がする。
 いずれにしても今の四人はみな短期間でこの部屋から移動する気配はないので、このメンバーでしばらくの間折り合いをつけてやっていかねばならない。
 
 言い忘れたが、マシンガン氏は夜中のいびきがひどい。昼間はマシンガン、夜はいびきで、隣の僕は精神安定剤の服用量が増えそうである。
 まあそれが嫌なら、差額料を払って個室へどうぞということなのでいたし方ない。貧乏人の僕はあきらめる他ないのである。