僕の心を後押ししてくれるもの

 長いたたかいであった。
 部分開通だった僕のしり街道が、十一日ぶりに本日早朝めでたく全面開通となった。滞留していた車両たちは、にこにこと手を振って、一気にしり峠を通過していった。街道口の復旧工事も順調にすすんでいる。めでたしめでたしである。
 
 しり街道はよいのだが、どうも睡眠のほうがうまくいかない。十二時ころまで眠れない日があるかと思えば、昨夜などは夕食を食べた後意識不明におちいってそのまま眠ってしまった。たぶんミンザイもなにも飲んでいなかったのだろうが、夕食後の記憶がまったくない。こちらはこまったものである。
 
 昨日、がん相談センターへ行ってきた。
 病院の一階にあるのだが、前を通りかかってなんとなくその看板に誘われてふらふらと入ってしまった。二度めである。
 対応に出たのは万田さんという女性だった。万田さんは僕の話をよく聞いてくれて力強いアドバイスをくれた。
「ここには緩和ケアチームがありますから、最大限に苦痛を取り除く努力をします。私もそのメンバーなのです。だから心配しないでください」
 と熱く語ってくれた。
 
 すでに僕の気持ちは移植のほうへ傾きつつあったが、GVHDが最後の恐怖であった。移植のための前処置もたしかにかなりハードな治療なので恐怖は恐怖なのだけれども、それはその治療が終了すればいずれ症状はなくなる。しかしGVHDは移植直後だけでなく、かなり時間がたってからも発症したりするやっかいな免疫病であるし、その症状もどこに出るか、どれだけ強く出るか、はたまた出ないか予測がつかない。そしていったん症状が出れば長期間にわたって治療が必要になる可能性もある。それが今の僕にはひざがすくむほどの恐怖なのだ。
 そのおそろしいGVHDに対して、この病院の緩和ケアチームは全力で対処してくれるという。チームには医師、看護師はもちろん、薬剤師、臨床心理士ソーシャルワーカー、栄養管理士、リハビリ専門職などがいるらしい。万田さんの言葉は、ふやけていた僕の心をまたすこし移植の方向へと後押した。いい病院だと思った。
 
 ひととおり万田さんと話をしてセンターを出ると、看護婦の彩佳さんと廊下でばったり会った。互いに七階の住人なのでそんなところで顔を合わせるのは珍しい。
「あら、千葉さん、どこへいってたんですか?」
「相談センターへね、行ってたんだ」
「ああ、そうだったんですか」
「そういう彩佳さんは?」
「検査の患者さんがあって」
「そう。おつかれさん」
「千葉さんも。お大事にね」
 彩佳さんがにっこり微笑んだ。その笑顔が僕の心の奥にすうっと沁みこんだ。