朗報は南風にのってやってきた

 いやに南風が強い。雲がちぎれちぎれにどんどん流れている。雨も降る予報だったが降らなかった。
 
 全面通行止めになっていた僕のしり街道が、今朝がた九日ぶりに開通した。まだ全面開通にはいたっていないが、街道内に滞留していた車両のうち、いちばんやっかいな先頭の大型車グループが半分くらい通過できた。
 けれども街道出口はいまだ復旧していないので、通過は予想どおり困難をきわめた。大型車グループは九日間の滞留の間にすっかり結束を固め、団子状態というか大きな固いボール状になっていたものとおもわれ、それを二度に分けて一台一台引きはがすように通過させたのだが、一台通過させるごとにはげしい通過障害が発生し、作業は困難をきわめた。しかしわれわれは敢然と障害に立ち向かい、屈することなく死力を尽くした。そして半数ほどの通過に成功した時点で、本日のそれ以上の作業は危険と判断され、翌日以降に持ち越されたのである。
 街道出口の復旧にもまだ数日を要する見込みであるが、こちらもどうやら峠は越えたものと思われ、あとは日ごとに復旧していくだろう。よかったよかった。ありがたやである。
 
 さて、下は下のほうでそういう具合にあかるいきざしなのだが、本業の血液のほうも、今日の採血でやっと血球数があがってきた。最初の抗がん剤治療から二週間と五日めである。上がってきた白血球もよい感じだと、今日の血液検査の結果を見ながら主治医が言った。おかげさまで今日予定されていた輸血が中止になった。こちらもめでたしめでたしである。

 めでたしありがたやついでに、もうひとつ。
 同室のタカハシさんが明日から外泊で家に帰るのだ。そして戻ってきてもうちょっと治療をしたらついに退院のはこびとなっているらしい。彼は再発での入院だから、これはかなりめでたい話である。他人ごととはいえ、同室の同志のめでたい話を聞くとこちらまでうれしくなるものである。これが一人だけよくなっても同室のひとの具合がよくなければ大手を振ってよろこべないが、今日はイーダさんも検査結果がよかったようなので、三人そろってめでたやありがたやとなった。
「これもここにありがたーいご僧侶がやってきたことと、あなたがたの信心のたまものです」
 と冗談で言ったら、イーダさんが吹き出した。
 
 そんな一日の最後に、朝から吹いていた風がやみ、あざやかな夕焼けが窓いっぱいにひろがった。