すいません。カーテン閉め切り立てこもり生活は、また半日が限界でした。

 タイトルのとおりである。
 情けないことに、カーテン閉め切り立てこもり修行は、またしても半日が限界であった。
 どうしてなんだろう? 僕はちょっと閉所恐怖症気味なのだろうか。
 べつにエレベーターや、それ以外でも狭い所に入って怖いと感じたことはない。が、この病室でカーテンを閉め切って長時間息を殺してじっとしているのには耐えられないのだ。テレビを見るにしてもラジオを聴くにしてもイヤホンで、それがまた閉塞感というかストレスになってしまう。新聞もあったが読む気になれず、数時間でギブアップしてしまった。
 午後一時。もう限界だ、とばかりカーテンを全開にして、病室を出てまっすぐ病院裏の森へ行って深呼吸をした。まさに生き返る思いがした。
 こんな体たらくでは無菌室一歩も外へは出しませんの刑に耐えられるのかどうか不安であるが、部屋から出ないだけなら自宅でときたま引きこもり半寝たきり的生活におちいることがあったのでなんとかなるのではないかと思われるが、はたして実際にそうなってみないことにはわからない。
 
 やっとひとごこちついていたら、友人のヨシダくんがやってきた。彼は前にも登場した、柏で唯一の友人である。
 ちょうどよいところへ来てくれたので、僕は意を決して彼に頼み事をした。
 「頼む。こんなことを頼んではたいへん申し訳ないのだが、僕の家まで行ってバリカンを取ってきてくれないか」
 髪を短く刈ったのでバリカンがあらたな必需品になったのだ。坊主というのは思いのほか伸びるのが早い。このくらい短くすると毎週のように刈らないとすぐにまだらに伸びてしまうのである。バリカンは持っているのだが家に置きっぱなしになっていた。しかしこれを自分で取りにいけないので困っていたのだ。
 僕は平身低頭、平蜘蛛のようになって頼んだ。すると人のよいヨシダくんは二つ返事で引き受けてくれた。僕の家は病院からそう離れていないのでそれ自体は大変なことではないが、そんなことを頼めるのはヨシダくん以外にはいない。家の鍵と、大まかな部屋の図面を書いて、「ここにあるはずだから頼む」と渡した。
 
 三十分ほどして、ヨシダくんが戻ってきた。しっかりバリカンを持って。ありがたい、ありがたい。丁寧に礼を言って受け取った。
 これで頭の問題はひと安心である。毎週のように床屋さんに行っていたのではお金がかかって仕方ないからね。
 固辞するヨシダくんにわずかばかりのコーヒー代を渡すと、かれはさらに固辞した後にやっとのことでそれを受け取って帰っていった。彼はこの日は仕事が早く終わったので、本来ならば奥さんと過ごす大事な時間のはずだったのである。それを削ってわざわざ来てくれ、そんなパシリみたいな用事を引き受けてくれたのだ。僕はまた、心の中で彼に合掌した。
 こうやって入院などしていると、人のなさけがいかにも身に沁みる。
 持つべきものはこういう友達である。