脱毛、その後……

 注文しておいたテレビチューナーがやっと届いたのでさっそくPCにくっつけてみたら、ちゃんと映った。ワンセグでときどき電波が途切れたりもするが、五百八十六円なら安いものである。備え付けのテレビ視聴用カード一枚千円より安いのだ。えらいものである。

 テレビを見るのはじつに入院以来三週間ぶりである。カードが高いので備え付けテレビは一回も見ていなかったのだ。普段家ではテレビはほとんど見なかったのだけれど、さすがに三週間ぶりに見るとじつに感動的に新鮮で、ずっとつけっぱなしにして、消灯時間が過ぎてもまだしばらく見ていた。こういう退屈きわまりない入院生活ではテレビさまさまである。
 
 さて、話はかわって脱毛。
 先日、三日ぶりにシャワーに入ったらごっそり抜けた。洗えば洗うだけ、こすればこするだけどんどん抜け、一気に半分以上抜け落ちてしまった。そしてあがってみると頭皮が透け透けで小林克也風半ハゲ状態になってしまった。
 それではいかにも中途半端ハゲなので、一階の床屋さんで松山千春型完全ハゲにしてもらってきた。といってもカミソリはつかえないのでバリカンで五厘刈りである。松山千春というよりは、くりくり坊主の一休さんである。いや、僕はジジイなのでどこかの御前さまか。まあ、僕は男だし、抜けた毛も治療が終わればまた生えてくるらしいので、御前さまでも一休さんでもどうということはない。
 
 むかし、付き合っていた女の頭を丸坊主に刈ってやったことがあった。いや、無理やり押さえつけて刈ったとか、へんてこプレイなどではない。その当時も僕は坊主にしていたので、あなたもひとつ同じように刈ってみてはどうかと言ったのだ。はじめは当然嫌がっていたが、刈ってやる刈ってやると言い続けているうちに、ある日、それでは刈っていただきましょう、ということになったのである。
 ロングの毛をすっかりきれいに刈ってやって瀬戸内寂聴ができあがった。しかし思ったよりどうということはなかった。彼女が彼女であることには何ら変わりはなかったし、僕の彼女に対するイメージも、まったく変わらなかった。そのとき僕は、髪などはあってもなくてもたいして変わるものではないと悟ったのだ。
 したがって、今回ぼくが小林克也を経て御前さまになったところでどうということはないのである。
 
 部屋に戻るとお菓子大好きのイーダさんが、「御利益ありますように」などと言って拝むので、「うむ。信心にお励みなされ」と言っておいた。
 しかし残念ながら、どうにも御利益の薄そうなエセ御前さまなのであった。