三連休初日は、ひたすらしずかなのであった

 静かだ。
 向かいのタカハシさんは相変らずカーテンの中で気配を消しているし、今日はそのとなりのお菓子のイーダさんまでめっきりおとなしい。
 今日から三日間は連休でドクターはいない。したがって看護婦さんはいるが、いつもの点滴などの他にはこれといって特別な処置はない。ここ749号室は朝から空気清浄機の音だけが響いている。
 僕はといえば、昨日タカハシさんに、「ベッドのカーテンは閉めておいたほうが空気清浄機の効果が高いのだ」ということを聞いたので、朝から閉め切ってみたのだが、いやはやどうにも閉塞感に耐えきれず、また全開にしてしまった。せっかくとなりのベッドが空いていて窓が見渡せるというのに、いくら効果があがるといえども、閉め切ってカーテンしか見えないせまい空間は僕には少々つらかった。せっかくアドバイスをしてくれたタカハシさんにはちょっと申し訳ない気持ちである。
 
 さて、脱毛のほうは順調に抜けているようで、枕やベッドには粘着コロコロが欠かせない。さすがにここはそういう病人ばかりが集う部屋だけあって、それぞれのベッドには専用のコロコロが備え付けられているので、せっせとコロコロしている。
 この脱毛というのは、ちょっとへんな話だが、頭の毛も下の毛も抜けるのだ。そしてヒゲは、その日をさかいに伸びなくなった。これはだけは毎日剃る手間がなくなったので歓迎である。髪はもうちょっと抜け進んだら、一階の床屋さんで御前さま刈りにしてもらうつもりである。
 
 話はかわるが、前回のドクター面談で詳しい病状を聞いてから今日で三日になるのだが、これがボディブローのように僕の心にじわりじわりとダメージを与えてきた気がする。日中、どうも心がざわざわと不安定なことが多くなってきたので安定剤を飲んでいる。
 昨日は連休なか日の平日で、ドクターもいたし相談センターもやっていたので相談したかったのだけれど、僕もドクターもセンターもそれぞれにバタバタと忙しくて相談できなかった。冒頭に書いたとおり今日から三日間はドクターもいなければセンターも休みである。このぞわぞわ悶々とした気持ちで三日間を過ごさねばならんのはちときびしいが、まあいたしかたない。連休明けまで待つしかあるまい。

 世間は色とりどりの行楽真っ盛りなのだろうが、ここはただただしずかに空気清浄機の音だけが響いているだけの連休なのであった。