欽ちゃんと二郎さんと天才女性ブロガーのはなし

 コント55号を知っているだろうか。
 欽ちゃん(萩本欽一)と二郎さん(坂上二郎)の漫才コンビである。

 おそらく関西のひとにはどこが面白いのか見当がつかないと思うが、ぼくらが子供の時分には、かのドリフターズと関東のお笑い人気を二分していた名コンビなのである。二郎さんがいわゆるボケで、欽ちゃんがツッコミ。しかし同じツッコミでも、関西のそれとちょっと違うのは、欽ちゃんは自分をサゲないところで、笑いをとりにいくのはいつも二郎さんの役目であった。
 
 コンビのうちはそれはごく普通のことだったのだけれど、コンビを解消した後も欽ちゃんはツッコミに徹した。ピンになった欽ちゃんが下げた相手は今度は素人の客、いわゆる客いじり芸になった。客いじりはとくにめずらしいものでもないが、大抵は最後に自分をサゲるのがオヤクソクだ。それがあるから落された客も最後は気持ちよく笑って帰ることができるわけで、かの毒蝮三太夫しかり、綾小路きみまろしかり。けれども欽ちゃんは最後まで自分をサゲない芸をつらぬき、その後看板ラジオ番組や仮装大賞の司会などをするようになっても、常に相手(客や素人出演者)を落す役に徹した。
 
 だからぼくは、じつは欽ちゃんがあまり好きではないのだ。笑いの基本は、あくまで自分を下げて客を笑わせるところにあると思っている。ツッコむだけなら若手でも素人でもできるわけで、ボケはそれよりはるかに難しく、重要なのだ。しかしながら、自分を落すのはたいへん勇気のいることである。誰だってカッコつけたいし、カッコいいと言われたいだろう。だからこそ、軽やかに自分を落せる人をぼくは尊敬する。
 
 こういうブログものなどを書き始めると、とくにぼくのような後期中年者ともなると、長年鬱積した山のような不満や恨みつらみが災いしてなかなか自分を落すのが難しくなる。つい文句や愚痴、狭量かつ無用な能書きなどをてんこ盛りに並べてたて、くそ面白くもない駄文に堕してしまいがちである。頑固ジジイは好きだが、頑固ジジイの能書き文はまったくいただけない。どうせ人さまに読んでもらうなら――いや、読んでいただけるのなら――楽しく軽やかに笑えるものでありたいと思う。
 
 つらつらそんなことを考えていたら、すばらしいブログに行きついた。

mamemisan.hatenablog.com

 作者は間違いなく天才である。妙齢の女性であるにもかかわらず、ここまでさわやかに徹底して自分をサゲられるひとを、ぼくはいまだ見たことがない。作品中のどこまでが本当でどこからがフィクションなのかはわからないが、ほとんどが事実なのではないかと思わせる。まさしく天才――天が彼女に与えたもうた才分――にほかならない。
 
 彼女を見習って、ぼくもまた今日よりは心あらたに、こんなステキな文章が書けるように精進したいと胆に銘じた次第である。