ブラスのジッポーが、やっといい音を出すようになってきた

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 3年ほど前に買ったブラス(真鍮)のジッポーである。

 もう20年くらい前のことになるだろうか。いっときジッポーはおそろしくクオリティが下がってしまったので、しばらく敬遠していた。

 燃料のオイルはすぐに蒸発するし、芯はもたないし、石もすぐに減ってしまうし、石がおさまっているところのクリアランスが大きすぎるのか、最後まで使いきらないうちにパチンと飛び出してしまうし、しまいにフタが溶接部分からポロリと取れてしまった。それまでずっとジッポーしか使ってこなかったのだけど、がっかりして、そんなことなら百円ライターのほうがはるかに優れているのでやめてしまったのだ。

 それからだいぶ年月が経った。何かの用事でアメ横に行ったついでに、懐かしくなって久しぶりに買ってみたのがこれである。ジッポーには星の数ほどあれこれ種類があって──といっても形と機能はみな同じなのだが──、あれこれと意匠を凝らしたものや、金銀でできていて一個一万円以上するものもあるが、そういうものにはまったく興味がない。いちばん安くて、いちばんシンプルなのがよろしい。
真鍮は錆びる素材だけれど、毎日使っていると錆びもわかずピカピカになって手によく馴染むのだ。

 ジッポー使いというものは、ことのほか音にこだわる。だからフタを閉めたときに「カチャン」とよい音がすると、えも言われずに嬉しくなってしまうのだ。しかし、だからといって人前であまりカチャンカチャンやってはいけない。間違いなくひんしゅくを買ってしまうから。ここぞというところで煙草をくわえ、おもむろにポケットからジッポーを取り出し風にちょいと背中を向け、炎の横側からたばこに火をつけて、さりげなく一回だけカチャンとやる。それが正しいジッポーの作法である。

 真鍮はブラスバンドという言葉があるごとく金管楽器の素材で、鉄やステンレスなどと比べてはるかによい音が出る。なかでも低音がよく出る……、はずなのだ。しかし僕が買ったこれはあまりよい音がしなかった。カチャンというより、カスッに近かった。
それでも僕は、「まあまあ仕方ないな。まともに火が付くだけあの頃のよりましだ」と使ってきたのだけれど、ここへきてたまにちょっといい音を出すようになってきた。
フタと本体のアタリがついてきたのと、フタをとめている蝶番がいい具合にゆるゆるになってきたのだ。カスッが、カチャンになり、たまにカチョンと理想的な音が出る。
たぶんあともう3年も使い込めば、百発百中でカチョンとなるに違いない。

 なくさずに大切に使っていこうと思っている。ジッポー使いは忍耐なのだ。

 なに、それまでめでたくこのジッポーが持ちこたえてくれれば、の話だが。