新春殺人事件(4)

彼らははじめから殺すつもりだったのか

 あらためて各社報道をあれこれ調べると、事件の大体の流れがわかってきた。あくまで報道発表であるが、時系列でまとめると次のとおりである。

  1. 4日午前2時ころ、容疑者の4人が被害者を自宅から連れ出した。
  2. 第一現場で被害者を川へ入らせた。
  3. それでも足りなかったので約3km上流の第二現場へ移動し、橋から落とした。(ここが殺害現場となる)
  4. 同6時ころ、容疑者ら自ら「友人が川で溺れた」と119番通報し、消防・警察が臨場。
  5. その後、警察が容疑者らを任意同行し、個別に事情聴取。
  6. 同7時半から10時ころにかけて、容疑者らを個別で実況見分へ。(このとき警察署を出る容疑者らの映像が報道される)
  7. 同10時ころ、第二現場で遺体が発見される。
  8. 捜査と並行して警察が逮捕状を請求し、同日に逮捕。
  9. 翌5日送検。

 驚いたことに、事件の発覚は、容疑者ら自らの119番通報であったのだ。
 事情聴取において彼らは当初、「5人で日の出を見に現場へ行き、被害者は落とした物を拾うために川へ入った」と述べた。
 しかし、その後供述が次のように変化する。

  • はじめから119番通報するつもりだった。
  • 第一現場は水深が浅く不十分だったので、さらに第二現場へ向かった。
  • 第二現場で「殴られるか飛びこむかどちらかにしろ」と被害者に迫り、被害者は飛び込みますと橋の欄干にぶら下がった。
  • 「10待つから飛びこめ」とさらに迫った後、被害者の手を払って川へ落下させた。
  • 被害者は容疑者の中の一人の金を勝手に持ち出していた。(別の供述では金銭とは別の理由があったとのこと)

 容疑者4人は19歳から22歳で、被害者を含め全員が地元の同僚、知人であった。被害者は17歳。
 被害者の死因は溺死で、身体に殴られたような外傷はなかった。そして被害者の財布、携帯電話は発見されていない。

 まあ、おおむねそのようなことなのだけれど、被害者である佐藤くんの身体に外傷がなかったというのは、「僕たち殴ったりしてないもんね。あいつが勝手に川へ落ちたんだもんね」と、あらかじめ計画していたものと思われる。

 仮にもし、それが単なるヤキイレが目的だったならば、第一現場で川へ入らせたことで目的は達せられるはずだ。目的を達するまで川でいじめればよいのであって、わざわざ第二現場に向かう理由に乏しい。
 ことによると、四人で取り囲んでヤキイレをしているうちにだんだんそれがエスカレートし、バレるとやばいので、もっと深いところに移動していっそ殺してしまおうとなった可能性もある。
 反対に、じつは当初から明確に殺す計画だったのだけれども、第一現場では無理だったので第二現場まで移動して目的を達したという可能性も否定できない。
 いずれにしても、「第一現場ではまだ足りなかったから第二現場へ向かった」のは、少なくともその時点においては「殺してしまえ」であったのだろう。

 殺された佐藤くんは、中学を卒業した後高校へは行かずに就職した。
 一方、容疑者4人は、職場の同僚や地元の先輩たちである。17歳の佐藤くんにとって、19歳から22歳の彼らは立派な大人であり、怖い存在だったのかもしれない。
 佐藤くんと彼らの間に何があったのかは知るよしもないが、そんな大人の先輩らに取り囲まれてさんざんいじめられ、殺されてしまった佐藤くんはかわいそうである。
 先輩らははじめから一切佐藤くんの身体に危害は加えず、彼が自分で川に入って溺れたことにしようなどと卑怯かつ幼稚な絵を描いて長時間かけてじわじわとなぶり殺しにし、自らそれを通報して墓穴を掘ってしまったのだ。
 そんなことで大人をごまかせるとでも思ったのだろうか。口裏合わせもまるでなっていなかった。
 佐藤くんのケータイと財布が発見されていないらしいが、ケータイはおそらく通話記録隠ぺいのために川へ投げ捨てたのだろう。
 財布は……、いじめついでに中身だけ巻き上げ、同じように川へ捨てたか。

 そんな彼らは、佐藤くんよりはるかに子供であり、卑怯なのではないかと感じる。

 元旦からずっとうららかな日よりが続いているのだけれども、そんな日差しの下で起きた、なんとも後味と薄気味の悪い事件なのであった。