新春殺人事件(1)

正月早々、近所で殺人事件が発生した

 その日、僕は近所の警察署の食堂にひるめしを食べに行った。
 おそろしくまずく、いつ行っても誰も入っていない食堂である。

 例によってその日も僕のほかには一人もおらず、50人ほど着席できる食堂のまん中にぽつんと一人で座った。
 料理を運んできたオヤジが、僕の前にそれを置くと向かい側の席に坐った。
 このオヤジがこの食堂の料理人兼ホール係で、オヤジの他に従業員は一人もいないのだ。
 つまり、この背中の曲がった初老のオヤジと僕の二人きりなのであった。

 オヤジは久しぶりに会話ができそうな客が来たので嬉しかったのだろう。
 けれども、見目麗しい女性ならいざ知らず、正月早々このオヤジに至近距離で見つめられ、しかも、したくもない会話につき合わされながら食事をするのはややつらい。

「……あの、ゆっくり食べさせてもらってもいいですか?」
 と僕。
「ええ、ええ、どうぞゆっくり食べて下さい」
 オヤジは満面の笑みでそう言った。
 どうやら僕の意図するところは通じなかったようである。

「いえ、あの……、そうではなくてですね、そこで見つめられていると落ち着いて食事ができないのです」
「あっ、そうですか」

 オヤジは残念そうに眉間にちょっとしわを作りながら隣のテーブルに移動し、僕に背をむけてテレビを見始めた。

 あれ?
 食堂やらオヤジのことはどうでもいいのだった。殺人事件の話だった。

 そういえば、入口の駐車場にテレビ局の中継車が長いアンテナを空へ伸ばして停まっていた。
 ロビーには普段はみかけない、黒いジャンパーの、いかにも「局のひと」的なあんちゃんがいた。

 人口40万人。
 都心のベッドタウンのこの平和な町では、それはきわめて異例のでき事であった。

「昨日今日は、もうバタバタたいへんですよ」
 隣のテーブルでオヤジが言った。

「なんかあったんですか?」
「殺人事件だよ……」

 オヤジは僕の顔を覗き込み、そんなことも知らんのかと言わんばかりにぼそっと言った。

「はぁ、いつですか?」
「昨日」
「どこで?」
「○○沼の……、なんだっけかな? 川があるだろ? その橋のところ」

 オヤジの話はまるで要領をえなかったが、なるほどそれでテレビ局が来ていたのだな。

 しかしここでオヤジの話し相手として捕まってしまうと抜け出すのは容易ではないと判断した僕は、早々に食事を終えて警察署を出た。
 門の外にテレビカメラを構えたあんちゃんがいた。

 帰宅してから、ネットのニュースを検索してみた。
 そういえば、入口の駐車場にテレビ局の中継車が長いアンテナを空へ伸ばして停まっていた。
 ロビーには普段はみかけない、黒いジャンパーの、いかにも「局のひと」的なあんちゃんがいた。

 人口40万人。
 都心のベッドタウンのこの平和な町では、それはきわめて異例のでき事であった。

「昨日今日は、もうバタバタたいへんですよ」
 隣のテーブルでオヤジが言った。

「なんかあったんですか?」
「殺人事件だよ……」

 オヤジは僕の顔を覗き込み、そんなことも知らんのかと言わんばかりにぼそっと言った。

「はぁ、いつですか?」
「昨日」
「どこで?」
「○○沼の……、なんだっけかな? 川があるだろ? その橋のところ」

 オヤジの話はまるで要領をえなかったが、なるほどそれでテレビ局が来ていたのだな。

 しかしここでオヤジの話し相手として捕まってしまうと抜け出すのは容易ではないと判断した僕は、早々に食事を終えて警察署を出た。
 門の外にテレビカメラを構えたあんちゃんがいた。

 帰宅してから、ネットのニュースを検索してみた。

   ※   ※   ※

新春殺人事件(2) - オマエらふざけんなよ)へつづく